観光情報
日本発の観光スタイル「産業観光」を楽しむ/ホームメイト
「産業観光」とは、「東海旅客鉄道株式会社」(JR東海)の初代社長「須田寛」(すだひろし)氏が提唱した日本発の観光スタイルです。もともとは、歴史的・文化的に価値のある工場や機械などの産業文化財、産業製品を通じて、モノづくりの心に触れることを目的として発案されました。近年では、伝統産業や伝統的な食文化を育てる産業にも目が向けられています。「日本発の観光スタイル『産業観光』を楽しむ」では、産業観光を楽しむコツを見ていきましょう。
モノづくりの現場を見る
産業観光とは、工場や企業、職人の工房など、産業に関連する施設や場所を観光の対象とする旅行形態です。食品や日用品、家具、乗り物、機械、楽器といった普段見慣れている暮らしの要素でも、その生産工程を見ることで新たに気付きを得られることが少なくありません。
産業観光の中で人気を集めているのが、モノづくりの面白さに触れ、作り手の想いを感じられる現場見学です。工場や工房での現場見学では、最新の自動化技術や伝統的な職人技が融合する様子を間近で見ることが可能。自動車工場では精密な組立ラインの動き、食品工場では厳格な品質管理と衛生基準、伝統工芸の現場では何世代にもわたって受け継がれてきた技と知恵を学ぶことができるのです。
さらに、作り手の情熱や哲学、環境への配慮、技術革新への挑戦など、製品に込められた想いを直接感じ取れるのも産業観光の魅力。モノづくりの現場では、見学者が実際に製品づくりを体験できるプログラムも用意され、このようなイベントや企画への参加を通して、より深い理解を得ることができます。
伝統が生み出すアートづくりの現場に触れる
伝統が生み出すアートづくりの現場に触れることは、日本の豊かな文化遺産を体感できる貴重な機会です。それぞれの産地に足を運び、焼き物、漆器、織物といった工芸品の製造工程を知ることは産業観光の醍醐味のひとつ。例えば、佐賀県有田町を中心に製造される有田焼の窯元では、400年以上の歴史を持つ磁器制作の技を間近で見ることができます。
伝統工芸の産地では、体験型ワークショップを開催しているケースも少なくありません。実際にモノづくりに挑戦することで、そこでしか得られない感覚を味わえるのが魅力。京都の絹織物・西陣織(にしじんおり)の機織り体験や、輪島塗の箸づくり体験など、各地の特色ある伝統技術を直接体験できるだけでなく、制作した作品は旅の記念にもなります。
おいしさの歴史と秘密を味わう

その土地で生まれ育まれている食文化を知り、味わうことも産業観光のひとつ。酒蔵・味噌蔵の見学、地場食品の試食や試飲など、「食」をテーマに産業観光を楽しむのもおすすめです。
例えば、酒蔵見学では、日本酒づくりの工程の見学が可能。兵庫県の灘(なだ)や京都の伏見(ふしみ)などの酒どころでは、江戸時代から続く蔵元で「杜氏」(とうじ:日本酒の醸造工程を行う職人)の技を学ぶことができ、試飲によって地酒の味の違いを楽しむこともできます。また、味噌蔵見学も人気です。長野県の信州味噌や愛知県の八丁味噌など、現地に赴くことで各地の特色ある味噌づくりを見学できます。できたての味噌の香りを楽しみながら、仕込みから熟成までの過程を学べるのが魅力です。
また、農業体験も食文化を知るきっかけのひとつ。静岡県での茶摘み体験や、北海道でのジャガイモ収穫体験など、季節ごとの農作業を体験してみてはいかがでしょうか。このような体験を通じて、食品の製造過程や地域の特産品に込められた想いを知ることができます。
近代化の足跡からモノづくりの心を想う

日本国内には、近代化を支えた鉱山、製糸工場、発電所、橋、運河、倉庫群など、価値のある産業遺構が数多く残されています。例えば、幕末期の九州では、西洋の技術を本格的に導入した日本初のコンビナート(生産効率化のため、石油精製や化学合成などの事業所が集まった工業地帯)が生まれました。また、炭鉱や鉱山、金山なども各所にあり、観光客向けに開かれている施設も少なくありません。
産業遺構には、世界文化遺産に登録されているものもあり、福岡県北九州市の「官営八幡製鐵所」(かんえいやはたせいてつしょ)、佐賀県佐賀市の「三重津海軍所跡」(みえつかいぐんしょあと)、群馬県富岡市の「富岡製糸場」(とみおかせいしじょう)などが代表的です。
2014年(平成26年)に世界遺産に登録された富岡製糸場は、明治時代に活躍した官営の製糸工場。工場内部を見学でき、実際に使われていた作業場や繰糸機などを見ることができます。また、フランス式繰糸器の実演や糸づくり体験なども開催。さらに、近代養蚕法開発の原点となった「田島弥平旧宅」(たじまやへいきゅうたく)や、蚕の卵を貯蔵した「荒船・東谷風穴蚕種貯蔵所跡」(あらふね・あずまやふうけつさんしゅちょぞうしょあと)など、製糸場以外の遺構も多数あり、複数のスポットを巡ることで、地域の産業の歴史をより深く学ぶことができます。
産業遺構は、先人のモノづくりや国の発展への熱い想いを今に伝える貴重な財産です。日本の近代化の足跡や、先人の熱い想いを肌で感じてみてはいかがでしょうか。
