高知県
竹林寺庭園
- 寺社・寺院庭園
- 古代/鎌倉
高知県高知市にある「竹林寺」(ちくりんじ)は高知県を代表する寺院であり、四国八十八箇所霊場のひとつ。そんな竹林寺の書院を囲むようにして造られたのが「竹林寺庭園」であり、2004年(平成16年)には国指定名勝庭園に指定されました。竹林寺庭園の特徴は、3つの庭それぞれが異なった趣を持つこと。鎌倉時代に「夢窓疎石」(むそうそせき)が手がけ、江戸時代に山内家によって手が加えられて現在の姿になりました。今回は、竹林寺庭園の歴史や様式、関連する武将、見どころなどについて詳しくご紹介します。


竹林寺庭園の施設概要
竹林寺の歴史

竹林寺の歴史は古く、奈良時代にまで遡り、「聖武天皇」の願いを受けて、僧「行基」(ぎょうき)が724年(神亀元年)に開きました。
今の場所が選ばれたのは、霊場として有名な「大唐五台山」に似ていたからだと言われています。平安時代に真言宗の開祖「弘法大師」(こうぼうだいし)が訪れたことにより、四国八十八箇所霊場の第31番札所に認定。現在も真言宗智山派に属しています。江戸時代には土佐藩(現在の高知県)藩主・山内家の祈願寺となり、1644年(寛永21年)には本堂と大師堂が増築されました。しかし、1808年(文化5年)に発生した火災により、本堂以外が消失。そののち、1816年(文化13年)に書院が増築、1980年(昭和55年)に五重塔が再建され、今日の姿に至ります。
竹林寺庭園の歴史
江戸時代後期に書院や客殿を増築した際には、さらに手が加えられたと伝承。実際、今日の竹林寺庭園は室町時代の趣を残しながらも、江戸時代を特徴づける色濃い造作が表れているのです。3つの庭は書院や客殿に面し、西庭の池などは建物の軒先あたりで直線に区切られています。観賞上・学術上の価値が認められ、2004年(平成16年)に国指定名勝庭園に指定。現在は「乗台寺」「青源寺」と並び称される土佐三名園のひとつです。
竹林寺の文化財
竹林寺の本尊は、創建時に行基が造ったとされる文殊菩薩(もんじゅぼさつ)。切戸(きれと)・安倍(あべ)の文殊と並び、日本三文殊とも称されてきました。現存する最古の文殊五尊像としても知られています。寺により秘仏とされ、基本的に一般には非公開。その他、宝物殿に安置された仏像17体、本堂・書院が国指定重要文化財となっています。
竹林寺庭園に関連する大名・武将
竹林寺にかかわった戦国武将として挙げられるのが、江戸時代前期に第2代土佐藩主を務めた「山内忠義」(やまうちただよし)です。竹林寺の中心となる本堂・大師堂は、共にこの山内忠義によって造られました。山内忠義は初代土佐藩主「山内一豊」(やまうちかずとよ)の弟である「山内康豊」(やまうちやすとよ)の4男として誕生。跡取りのいない山内一豊の養子となり、わずか14歳で20万2,600石を治める第2代土佐藩主となりました。

また、それとほぼ同時期に「徳川家康」の養女であった「阿姫」(くまひめ)と結婚。これは徳川家と山内家、両家の関係を強化するための縁談だったとされています。山内家は阿姫を大切にし、また夫婦は仲睦まじく暮らしたため、山内家は徳川家からの厚い信頼を獲得。2014年(平成26年)には、竹林寺にある阿弥陀如来立像の中から、徳川家康を表す「大相国一品」(だいしょうこくいっぽん)という文字が発見されています。
山内忠義は治世の前半で、土佐藩の財政難を解決すべく、元和改革(げんなかいかく)を断行。農地から逃げ出す走り者への対策強化など農民支配の徹底に努め、割地制度(わりちせいど:収穫高に合わせて田を割り変える制度)などの施策により、近代的な支配体制の礎を築きました。治世の後半では、「野中兼山」(のなかけんざん)を奉行職に就けてさらに改革を徹底。新田開発や殖産興業を推奨し、藩財政の確立に尽力しました。一方で、寺社の修復など文化面に力を入れたことでも知られ、竹林寺の増築などもその一環と推測。1656年(明暦2年)に中風を患って隠居し、1664年(寛文4年)に73歳で亡くなりました。
竹林寺庭園の特徴・様式
竹林寺庭園は池泉回遊式(ちせんかいゆうしき)と池泉観賞式(ちせんかんしょうしき)の2様式を併せ持つ池泉庭園です。
池泉庭園とは、池を中心として自然の景色を模した庭園のこと。庭園には壮大な自然が凝縮され、海や山、川などを表した部分が見られます。池泉回遊式と池泉観賞式は、そんな池泉庭園の一種で、双方の違いは、想定される観賞方法。池泉回遊式では池の周りを歩き、池泉観賞式では建物の中で座って池泉庭園の景観を楽しみます。
世が荒れて庭が狭くなった室町時代には池泉観賞式が主流となり、広大な大名庭園が幾つも生まれた江戸時代には池泉回遊式が主流となりました。竹林寺庭園は鎌倉時代後期に夢窓疎石が手がけ、江戸時代に山内家が手を加えたとされています。そのため、池泉観賞式をベースとしながら池泉回遊式でもある、独特の池泉庭園が誕生したのです。
竹林寺庭園の見どころ
閑静な西庭

池や苔、紅葉などが楽しめる閑静な雰囲気となっているのが西庭。中国の「廬山」(ろざん)と「鄱陽湖」(はようこ)を模して造られたと言われています。竹林寺の公式ホームページなどで、良く取り上げられているのもこの西庭です。西庭の見どころは、客殿の軒先近くまで迫る、南北に細長く掘られた池。石橋が架けられており、そこから山に向かって小径の痕跡も見られます。
豪快な北庭
湧水や天然の巨岩など、五台山の自然を活かした明るく豪快な北庭も見どころ。そこから望むことができるのが、中央の巨岩、その奥の小さな枯滝、さらに山側には「三尊式枯滝石組」(さんそんしきかれたきいわぐみ:三尊像に見立てて組まれた枯滝)です。
山裾に沿って延びている湧水をたたえた瓢形の池は、大振りの石で護岸され、茶亭からの飛石が中央にある石橋につながっています。
五台山観月会のライトアップ
竹林寺がある五台山周辺は、古くから桂浜と並ぶ月の名勝と称されてきました。そんな五台山の月の美しさを愛でるべく、牧野植物園が開催しているのが五台山観月会です。毎年中秋の名月の頃に開催され、竹林寺でも庭園のライトアップが行われます。月と明かりに照らされた名勝庭園の双方を楽しめるのは、このイベントならでは。イベント中、庭園を臨む書院ではお抹茶も頂けます。
竹林寺庭園の施設情報
竹林寺庭園の施設情報についてまとめました。
フリックによる横スライド仕様となります。
施設名 | 竹林寺庭園(ちくりんじていえん) | ||
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所在地 | 〒781-8125 高知県高知市五台山3577 | ||
アクセス | 高知自動車道「高知IC」より車で約20分 | ||
開園時間 | 8時30分~17時 (境内は8時~17時) |
休園日 | 年中無休 |
料 金 | 大人:400円、高校生:200円、中学生:150円、小学生:100円※団体割引あり |