
<解説>
奈良県吉野町にある金峯山寺(きんぷせんじ)は、この地に修行に入った役行者神変大菩薩(えんのぎょうじゃじんべんだいぼさつ)によって開創されたと伝えられています。役行者が乱れた世の中を救うために強く祈ると、修験道独特の本尊である「金剛蔵王権現(こんごうざおうごんげん)」を感得。役行者は、これこそ世の人々を救う守護神だと深く感謝し、その姿を桜の木に刻みました。この結果、吉野山が桜の名所になったとも言われています。
毎年7月7日は役行者の縁日で、役行者が産湯につかったと言われる大和高田市にある捨篠池(すてしのいけ)の清らかな蓮の花を、蔵王権現に供える「蓮華会(れんげえ)」が行なわれます。それと同時に行なわれるのが、金峯山寺の三大行事にも数えられるユニークな「蛙飛び行事」。
延久年間(1069~1074年)、神様を侮っていた男が金峯山に上り、蔵王権現に対して暴言を吐きました。すると大鷲が男をさらい、断崖絶壁へ置き去りに。それを哀れんだ金峯山寺の高僧が男を蛙の姿に変えて助け出し、蔵王堂で読経した功徳の結果、人間に戻すことができた言う説話に基づきます。
行事では大青蛙の着ぐるみを載せた太鼓台が、太鼓と拍子木を鳴らす音に合わせ、七夕飾りと提灯に彩られた門前町を上千本から下千本へと向かいます。蓮華の花を運ぶ一行と合流後、大行列を組んで蔵王堂へ。法要を行なうと、いよいよ蛙飛び行事が始まります。花道状の舞台を飛び跳ね、導師に近づく所作が行なわれ、導師の授戒によって大青蛙が人間の姿に戻り、行事は終了。これは甦り(よみがえり)神事の一種とも考えられています。また、蛙は吉野山の地霊を表す動物と信じられており、この蓮華会が行なわれる日には、吉野山の家々で「柿の葉寿司」を作って食していたようです。

