
<解説>
「強飯式(ごうはんしき)」は、栃木県日光市の日光山輪王寺に伝わる儀式です。日光山は766(天平神護2)年に勝道上人(しょうどうしょうにん)が開山し、関東の一大霊山として知られます。強飯式は、この輪王寺で行なわれる独特の儀式で、江戸時代には徳川将軍家や全国の名だたる大名たちも「我が藩の名誉」として強飯式頂戴人に名を連ねました。
強飯式は「三天合行供(さんてんごうぎょうく)・採灯大護摩供(さいとうだいごまく)」「強飯頂戴の儀(ごうはんちょうだいのぎ)」「がらまき」の3つからなります。「三天合行供・採灯大護摩供」では、僧侶・山伏・飯を強いられる頂戴人の約20名が行列をなして堂に入り、すべての扉が閉じられて照明も消され、灯りは1本のろうそくのみ。三天合行供の読経の声が上がり、採灯大護摩供の炎が燃え上がります。その後、強飯頂戴の儀へ。
御神酒と祈願文、強飯、菜膳、金甲、供養の順に進み、朱塗りの大きな杯になみなみと注がれた御神酒を頂くと、山盛りのご飯(3升分)が運ばれます。祈願文の儀が終わると山伏たちが頂戴人の頭上にご飯を載せ、「三社権現より賜る御供」「七十五杯残さず頂戴しろ」「頭が高い」と責めを開始。
ご飯の次には、ご馳走として日光の名物珍味を盛り上げた菜膳が添えられます。最後に毘沙門天の金甲(かぶとのこと)を頂戴人の頭上に授け、「コリャコリャ」の掛け声と共に大キセル、ネジレ棒等を手にした山伏が「めでとう七十五杯」と言って手にした品物を頂戴人の前に出して強飯の儀は終了。式が終わると頂戴人たちが、頂いた福を自分だけの物にせず、他の人々にも分け与えるため、お菓子等を一般参拝の人々にまく「がらまき」が行なわれます。昔から「この秘法を受けた物は、七難即滅・七福即成の現世利益疑いなし」と語り継がれ、強飯式に参加し、杓子をかたどった御札を授かると、多くのご利益が得られるとされています。
江戸時代には、十万石以上の大名でなければ頂戴人になれませんでしたが、現在は申込みによって頂戴人になることが可能。頂戴人をつとめると1年の間、三仏堂前に名前が掲示されます。ご祈祷を申込むと、堂に入って強飯式の参観が可能。がらまきには自由に参加することができるので、ご利益を求めてお詣りしてみてはいかがでしょう?

