
<解説>
福岡県北九州市小倉南区の井手浦に伝わる「尻振り祭り」は、老若男女が総出でお祭り行事に参加して、お尻をピンピン振って豊作を祈る祭りです。いつ始まったのかはさだかではありませんが、「昔、平尾台というところに大蛇が住み着き、農民たちを苦しめていたところ、見かねた神様が悪さをする大蛇に斬り掛かり、切られた尻尾が井手浦まで飛んで落ち、ピンピン跳ねました。
不思議なことにその年はかつてない程の豊作になったことから、人々は喜び、以来田畑の仕事始めに先立ち、藁で作った大蛇を供え、尻を振って豊作を祈るようになった」という言い伝えが残っています。春に備えて農作業を始める1月8日、井手浦公民館前の広場に集まり、藁で作った長さ4メートル、高さ3メートルの大蛇を祭壇に供え、その前で神主、当番座元、翌年の当番座元の3人が腰をかがめて尻振りを開始。
大きく振る程、大豊作になると言われているので、「それっ右!」「それっ左!」と威勢の良い合図につられて尻を振り続けます。
戦前までは酒を飲まずに行なっていたそうですが、戦後になって見物客が増え、いかに神事と言えども照れくさいと、最初に直会(なおらい)でお神酒を頂いてから始めるようになったとか。
尻振りが終わると見物客が待ち望んだ儀式がスタート。神主が大蛇の正面に立ち、酒を振る舞ってから弓を取り、大蛇に向けて3本の矢を放ちます。
続いて刀を抜いて尾、胴、首に斬りつけ退いた瞬間、大蛇の中に隠した干し柿目がけて一斉に飛びつく見物客。この干し柿を食べると無病息災、厄除、豊作のすべてが叶えられると言われているからです。
かつては16個しか入れてなかったそうですが、昨今は見物客の増加に合わせてたくさん入れるようになりました。体内を探って干し柿をつかむと、皆笑顔で家路につき、祭りは終了します。

