
<解説>
三重県鳥羽市の鳥羽港から北東約14キロメートルにある「神島」。伊勢湾に浮かぶ人口400人余りのこの小さな島は、三島由紀夫の小説「潮騒」の舞台としても有名です。
この島で元旦未明に行なわれるのが島の氏神・八代神社の神事、ゲーター祭。「天に二つの日輪無く、地に二皇ある時は世に災いを招く、若し日輪二つある時は、神に誓って偽りの日輪は是の如く突き落とす」という、南北朝時代の思想を表した行事と言われています。
新しい年を迎える「迎旦(げいたん)」が訛り、「ゲーター」となったとされていますが、語源や由来は定かではありません。大晦日の晩、白い装束に身を包んだ島の男達が集まり、グミの枝を丸めて直径2メートル程の日輪(太陽)を象った輪「アワ」を作ります。アワを作る人の他、ご神木を彫る人、お神酒を煽る人など、抜群のチームワークで作業が進行し、22時頃にアワが完成。
一旦自宅に引き上げた男達は、元旦未明に長い竹を持って再び集合し、アワを竹の先で天高く突き上げ、地上にたたき落とします。アワが高く上がる程その年は豊漁になると言われ、願いを込めながら力いっぱいアワを突き上げてたたき落とす様子は勇壮そのもの。その後八代神社で参拝し、邪気を払って一年の平穏を祈り、参拝が終わる頃に初日の出が島を照らしはじめ、新たな年の始まりを告げます。奇祭と称さる独特の神事と島の風情、ご来光が相まって、神島の名の通り神々しいお正月風景を見ることができるはずです。

