
<解説>
「むこ投げすみ塗り」は松之山温泉に伝わる越後の奇祭と言われ、毎年小正月(1月15日)に行なわれます。
松之山温泉湯本近くの天水越(あまみずこし)集落で300年程前から伝わり、前の年にこの集落から嫁をもらった他の集落の婿が、嫁の里帰りである「薮入り」で初めて泊まりにくると、この洗礼を受けたそうです。
嫁を追い出すなど粗末な扱いを禁じたと言う説や、略奪結婚の名残りでよそ者に集落の娘を奪われた青年たちの腹いせなどとも言われています。婿は高さ5メートルもある崖の上から男たちによって豪快に投げ落とされますが、豪雪地帯の松之山の雪がクッションとなり、ケガをすることはありません。崖下では嫁が優しく迎えてくれるため、夫婦の絆も深まるとか。
一方、「すみ塗り」は「むこ投げ」に引き続いて行なわれる行事で、正月に飾られた門松や神棚の古札、書き初めなどを持ち寄り、雑木と稲藁で高い塔を作って火をつけ、繁栄と無病息災を願う行事で「どんど焼き」とも言われています。
火が燃え尽きる頃、その灰と雪を混ぜ合わせて炭を作り、「おめでとう」と言いながら誰彼となく顔に炭を塗り合います。真っ黒になるので、参加される場合は汚れても良い服装でのぞみましょう。ちなみに「どんど焼き」は出迎えた歳神様をお送りする火祭りで、地域によって呼び方が変わります。

