
<解説>
石川県輪島市門前町で、毎年2月6日に行なわれる「ゾンベラ祭り」。能登で唯一の田遊びで、石川県の無形民俗文化財にも指定されています。
会場となるのは、電気も届いていない山中にひっそりと佇む鬼屋神社。年に一度だけここに住民が集まり、田の荒おこしから田植えまでの行事を神前で行ない、あらゆる作物の豊作を意味する五穀豊穣を祈ります。
拝殿の中央を田んぼに見立て、氏子総代の一人が「農之次第(のうのしだい)」という巻物を読み上げたあと、鏡餅に棒をさした鍬(くわ)で畦塗り(あぜぬり)や苗代づくりを再現。「エエゾンベラエエゾンベラ」の掛け声とともに参列者の輪の中を回ります。
神楽太鼓を牛に見立て、牛の鼻取り役が激しく動き回ったり、すげ笠をかぶった早乙女5~6名が登場したり、苗の代わりに松葉を植えて田植えの模様を演じるなど、計13の神事を奉納。一連の芸能の中でいくつものアドリブが入り、拝殿内は終始笑いに包まれます。
輪島の方言で「豊か」という意味を表す「ぞんぶり」という言葉を何度も繰り返し使うことから、「ゾンベラ祭り」の名が付けられました。奥能登の春の到来を告げる神事として受け継がれています。

