
<解説>
「牛乗り・くも舞」は秋田県潟上市(かたがみし)の東湖八坂神社で行なわれる「統人行事」の中のひとつです。この統人行事は一年をかけて延々と行なわれますが、7月7日に行なわれる「牛乗り・くも舞」は希有な行事として知られています。
牛乗りに志願する男性は密かに個室に入り、ある儀式が行なわれます。しかし、それは誰も見ることができず、誰かに話すことも許されていません。
部屋から出てきた男性は酩酊状態で意識を失いかけ、神がかった様子。この牛乗りこそが、東湖八坂神社にお祀りしている須佐之男命(すさのおのみこと)だと言われています。
牛に乗って船越水道に停泊している船の側まで曳かれ、船の上に作られたやぐらで深紅の装束の男性が何度も宙返りする「くも舞」を眺めます。深紅の装束の男性が「八岐大蛇(やまたのおろち)」で、須佐之男命が睨みつけ、退治する姿を表現していると言われています。
神話にある「須佐之男命の八岐大蛇退治」の故事と水神信仰が習合し、八郎潟の豊漁と豊作を願い、蒸し暑い時期の疫病を祓う神事として、千年以上にわたり諸行事が厳格に継承されています。1986(昭和61)年に国の重要無形民俗文化財にも指定されました。

