デジタルアートとは
デジタルアートとは、パソコン、タブレットなどを使用して作られた芸術作品の総称で、映像「コンピューターグラフィックス」(CG)などのデジタル技術を活用し、生み出された「メディア・アート」の一部を指します。
デジタル技術は日々進化しながら、幅広い年齢の人々がデジタルアートに親しみ始め、昨今では随所でデジタルアートの美術館も開館。また、デジタルアートの専用販売市場が誕生するなど、さらなる拡大が見込まれます。この記事では、今後、巨大マーケットへと発展する可能性を秘めた、デジタルアートの世界についてご紹介します。
デジタルアートの概要
デジタルアートとは何か
デジタルアートは、主にコンピューターを用いて画像を生成する「コンピューターグラフィックス」(CG)、あるいは映像を合成し特殊効果を施した「ビジュアルエフェクツ」(VFX)などを用いて制作された芸術作品です。
デジタルアートを制作するために必要なソフトには、無料ダウンロードできるフリーソフトからプロ向けの有償ソフトまで様々な物があり、Windows 95以降は、画像を描くための簡易ソフト「ペイント」が、Windows搭載パソコンに標準装備されるようになりました。このような環境から、趣味でデジタルアートを制作し、SNS等で共有する人が増えるなど、今やデジタルアートは私たちの身近な存在となっています。
また、IT技術の進化と共にデジタルアートも発展を続けており、これまでの芸術作品では考えられないような多様性に富んだ作品が数多く生み出されてきました。なかでも日本の「チームラボ」(東京都千代田区)と「ライゾマティクス」(東京都渋谷区)は、このデジタルアート分野において世界的にも高く認知されている企業です。
チームラボは、2018年(平成30年)6月に東京のお台場へ、デジタルアートの常設美術館「チームラボボーダレス」を開館。米国TIME誌における「World's Greatest Places 2019」(世界で最も素晴らしい場所2019年度版)にも選ばれ、2021年(令和3年)7月には、単一アート・グループの世界で、最も来館者が多い美術館「Most visited museum (single art group)」としてギネス世界記録に認定されるなど、世界中のファンを魅了してきました。
また、2022年(令和4年)2月25日に所有証明書付きデジタルデータである、「ノン・ファンジブル・トークン」(NFT)を活用した先進的な取り組みを発表するなど、常に新技術を取り入れた作品を生み出している会社として、世界中から注目を集め続けています。
ライゾマティクスは、テクノポップユニット「Perfume」(パフューム)の舞台演出をはじめ、アイスランド歌手「ビョーク」、能楽師「野村萬斎」とのコラボレーションで広く知られ、2016年(平成28年)「リオ・オリンピック」の閉会式を手掛けたことも大きな話題となりました。2021年(令和3年)4月には、自社のNFT作品を販売するオンラインマーケット「NFT-Experiment」(エヌエフティ-エクスペリメント)を開設。チームラボ同様、常に最新の技術を追求し続けているクリエイティブ集団です。
従来型アートとデジタルアートの違い
デジタルアートと従来型アートの最も大きな違いは、実物の作品があるか否かになります。デジタルアートには実物の作品がなく、パソコン、スマホなどを通じて作品を鑑賞するのが一般的です。
こうしたデジタルアートが広まってきた背景には、NFTの存在が大きく影響しています。NFTは、所有証明書付きのデジタルデータであり、デジタルコンテンツと紐付けることで、自分が所有者であることを証明することができます。そして、このNFTとデジタルアートを紐付けした物が「NFTアート」です。
以前のデジタルアートはコピーが簡単にできるため、作品に価値が付けにくく、売買することが難しい物でしたが、NFTにより作品に鑑定書を付随させることができるようになったことから、高い価値が付くようになりました。また、1点物の従来型のアートとは異なり、複数人にデータを販売することができ、かつ作品が販売されるごとに、作者にも対価が支払われます。こうしたデジタルアーティストの継続的な支援にもつながるという側面も、NFTアートの大きな特徴です。
NFTアートの注意点
NFTアート売買は、NFT専用のマーケットプレイスで行われ、「イーサリアム」などの仮想通貨による、決済及び取引が世界中で容易にできるメリットがある一方、誤った「ウォレットアドレス」(仮想通貨の口座番号)へ送金してしまうと、永遠にその資金を取り出せない状況に陥ったり、資金決済ができないことで、作品自体が入手できなかったりする可能性もあります。
また、取引を行うごとにかかる手数料が、仮想通貨の流通量の増加に伴って変動するため、高額になる可能性もあるため、NFTアートを仮想通貨で購入する場合は、ある程度の仮想通貨に関する知識が必要となります。さらに、デジタルアーティストに対し、本人確認の制度が整っておらず、現段階ではNFTが従来の美術品の鑑定書と同様の水準に至っていないのが現状。デジタルアーティストになりすました、贋作取引に巻き込まれるリスクもあるため、注意しましょう。
投資としてのNFTアートの価値とは
その一方で、NFTアート作品の人気が高まると値段が上がることもあり、NFTアートは新たな投資先としての魅力が高まっています。
老舗オークションハウス(競売会社)「クリスティーズ」が、2021年(令和3年)3月に開催したオークションに初めてNFTアート作品が出品され、デジタルアート作家「Beeple」(ビープル)の作品が、約75億円で落札されました。それを皮切りに、多くのNFTアートの出品が活発に行われるようになり、大手競売会社「サザビーズ」も参入。サザビーズが2021年(令和3年)に販売したNFTアートは、同年11月中旬に6500万ドル(約8,490億円)相当に及び、クリスティーズも1億ドル(約1兆3,074億円)以上の販売実績を得るなど、2021年は「NFTアート元年」と言われるほど盛況ぶりを見せたのです。
デジタルアートの種類と作り方
一般的によく知られているデジタルアートには、以下の種類があります。
- イラストレーション
- 写真(画像)
- 映像(動画)
- ゲーム
- 音楽
それぞれどのように制作されているのか、特徴と合わせて見ていきましょう。
イラストレーション
イラストレーションの作り方はパソコン、スマートフォン、iPadなどにイラスト作成ソフトをダウンロードし、タッチペンなどでイラストを描きます。従来のアートとは異なり、修正と削除が容易にできるところが大きな特徴です。代表的なイラスト作成ソフトとしては以下の通りです。
・ペイントソフト
Fire Alpaca(ファイアアルパカ)、SAI(サイ)、CLIP STUDIO PAINT(クリップスタジオペイント)
・フォトレタッチソフト
Photoshop(フォトショップ)、Lightroom(ライトルーム)、PhotoDirector (フォトディレクター)
・ドローソフト
Illustrator(イラストレーター)、CorelDRAW(コーレルドロー)
前述したクリスティーズで売買された、デジタルアーティスト・Beepleの作品「Everydays - The First 5000 Days」は、オンラインセールにて約75億円で落札。この取引額は、当時の作品としては第3位の高額で、美術界のみならずイギリスの経済紙「フィナンシャル・タイムズ」など、数多くのメディアで取り上げられ注目を集めました。
写真(画像)
「写真」(画像)におけるデジタルアートはカメラ、スマートフォンなどで撮影した画像を、パソコンもしくはスマートフォン、タブレットへ取り込み、画像編集ソフトを使いながらデザインと加工を施して新たな芸術性を加えていきます。
代表的な画像編集ソフトとして、PhotoDirector、Photoshop、Lightroomなどが人気とされます。
特筆すべきエピソードとして、インドネシアの大学生「スルタン・グスタフ・ゴザリ」さんが、自撮り写真をNFT化して販売したところ、2022年1月に売上が合計100万ドル(約1億1,400万円)を超えたことがインターネットを中心に話題となりました。
2022年(令和4年)1月15日付のフランス「AFP」の記事によるとゴザリさんは、インドネシアの中部スマランの大学で、コンピューターサイエンスを学ぶ過程でNFTを深く知り、「ゴザリの毎日」と題して、NFT売買プラットフォーム「OpenSea」(オープンシー)において、2021年(令和3年)12月から3ドル(約340円)で自撮り写真の販売を開始。自分の写真を買う人は誰もいないと思っていたところ、有名シェフが写真を購入し、SNSで紹介したことをきっかけに売上が急激に伸び、思いがけない夢のような出来事が生まれたのです。
映像(動画)
「映像」(動画)はスマートフォン、デジタルカメラで撮影した動画を、動画編集ソフトで編集して制作します。撮影時には、カメラの他にも状況に合わせて、三脚、マイク、照明などを準備。また動画編集には高性能のCPU(プロセッサー:パソコン制御を行うパーツ)と、容量の大きいメモリを搭載した処理能力が高いパソコンが必要になります。代表的な動画編集ソフトには、Final Cut Pro(ファイナルカットプロ)、Premiere Pro(プレミアプロ)などがあります。
「米プロバスケットボール協会」(NBA)では、2020年(令和2年)10月から試合のハイライト映像のNFT動画を売買するサイト、「トップショット」をオープン。バスケットボール界のスーパースター、「レブロン・ジェームス」さんのスラムダンク・シュートのNFT動画が20万8000ドル(約2,270万円)で取引され、NFT動画としては取引最高額を記録。ちなみに「八村塁」さんのNFT動画は、ウィザーズ所属時におけるキャバリアーズ戦(2019年[令和元年]11月8日)でのダンクシュートのシーンが37,500ドル(約409万円)で取引されました。
ゲーム
「ゲーム」制作には、プログラミング、グラフィック、アニメーションを作成するための制作ソフトをはじめ、高性能のCPUと容量の大きいメモリを搭載した処理能力の高いパソコンが必要になってきます。主なゲーム制作ソフトとしては、Unity(ユニティ)が有名。
ゲーム制作は、まずは企画から始まり、その後は仕様書の作成、音楽、シナリオ、プログラム作りへと進み、ゲームソフト製品のアルファ版、ベータ版による、ユーザーテストを経てようやくリリースされます。
特筆すべきエピソードとして挙げられるのが、2019年(令和元年)6月25日にリリースされた日本最大級のNFTカードゲーム「Crypto Spells」(クリプトスペルズ)。このNFTカードゲームは、パソコン、スマートフォンでの無料プレイが可能で、ゲーム内で入手したアイテムが資産となるため、NFTカードゲームの入門として人気を博しています。また、このゲームのユーザーは、自分が持っているゲームアイテムをゲーム内マーケットで売買し、仮想通貨を得ることができるのも大きな特徴。従来のアナログゲームにはない、ゲームとゲーム内アイテムが売買できるマーケット一元化が行われた、新時代のデジタルカードゲームと言えます。
音楽
「音楽」を作る場合、高性能のパソコン、オーディオインターフェース(マイク、楽器をPCにつなぐための機器)、音楽制作ソフトが必要。代表的な音楽制作ソフトとしてはSteinberg Cubase (スタインバーグキューベース)、Ableton Live (エイブルトンライブ)、Avid Pro Tools(アビッドプロツールス)などがあります。
NFTミュージックとして有名なのが、ミュージシャン「坂本龍一」さんが制作した、映画「戦場のメリー・クリスマス」のテーマ曲「Merry Christmas, Mr.Lawrence」。2021年(令和3年)12月21日に、期間限定でこの曲のメロディー595音を1音ずつ分割し、1音あたり1万円で販売。販売直後にアクセスが集中し、販売元の「Adam by GMO」のサーバーがダウンする事態となったのです。すでに2次流通している物もあり、1音あたり価格は10万円から3,000万円超と幅広く取引され、注目を集めました。
このように、デジタル技術の進化はめざましいものがあり、デジタルアートとNFTの技術を組み合わせることで、驚くような作品が誕生し始めています。趣味にとどまっていたものが、ふとしたきっかけから世界中に知られるようになり、大きな収益が得られるようになるなど、無限の可能性が秘められているのが、デジタルアートの世界なのです。
また、絵が得意でない人でも、様々なソフトを駆使してデジタルアートを作ることができます。無料のソフトもたくさんあり、作品を簡単に作れることもデジタルアートの魅力のひとつです。気になる方は、気軽にデジタルアートを始めてみてはいかがでしょうか。
※この記事は、2023年(令和5年)12月時点の情報に基づいて作成されています。
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